「簿記はきれいな世界だった」数字に天職を見出した彼女が全体最適思想で経営企画を担うまで【MY CAREER STORY】
「誰もが使える世界規模のAIプラットフォーム」の実現を目指すAI inside。事業の拡大を図ることは当然ながらも、言わば“組織拡大の成長痛”とも呼べるものが起こります。人員の増加、急がれる制度設計、煩雑になるシステム、予算の進捗管理……さまざまな観点から対応に当たらねばなりません。そして、それらは往々にして「拾われにくいボール」として社内に点在することも、珍しくないものです。
AI inside の社内表彰で「ボールを拾いにいく積極性」や「チーム力を底上げする推進力」を評価されたのが、2つのユニットを兼務する石原聖子です。バックオフィス部門で経営企画に加えて経理としても携わる石原は、社員からも頼られる存在の一人。
初めて簿記を知ったときに「きれいな世界だ」と感じた、と石原は話します。その瞳から見える、彼女なりの数字や組織への考え方に触れました。
※内容や肩書・所属は記事公開当時のものです
人生で初めて興味を持てたことが、簿記だった
──経理や経営企画という仕事へ行き着くまで、どういった道のりを歩んできましたか?
生まれも育ちも神戸で、大学を卒業するまで過ごしました。神戸といっても、田舎のほうです。はっきり言って、私は目立つようなタイプではなく、勉強が得意だったわけでもなくて。管理栄養士になるつもりで、大学では栄養学を専攻しました。
就職も無事に決まったのですが、ふと「このまま進んでいいのかな?」と迷っていました。そんな時に、ボランティアで長く介助をしていた、おばあちゃんから「あなたは管理栄養士よりも、違う仕事のほうが合っているんじゃない?」と言われたのです。
そこから、「私には何が合っているんだろう?」という自分探しが始まりました。結果的に管理栄養士の道ではなく、金融系企業で営業職に。新人はジョブローテーションで他の部署へ異動する習慣のある企業だったので、しばらくして経理へ移りました。そこで初めて簿記という世界を知って、「なんて面白い世界なんだろう!」と感じました。
──どんなところに面白さを感じたのでしょう?
きれいな世界なんですよね。簿記って数字が単純に並んでいるだけではなくて、「財務三表」といわれる「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」「キャッシュフロー計算書(C/S)」へ全て一連につながり、数字がぴたりと合って絶対に答えがあることが面白い。人生で初めて興味を持てることが見つかった想いでした。
その後、地方銀行へ転職して、経営企画室で主計や予実管理などを担当する傍らで、「もっとこの世界を知ろう」と大学院に通い、国際会計や経営学を修めて簿記1級も取りました。
──仕事をしながら学ぶとなると、かなり大変だったのでは。
そうですね。「楽しいからできた」という感じですかね。勤めるうちに、もっと経理の仕事がしたくなってきたのですが、単体だとその会社の経理しか担当できません。そこで、介護業やフランチャイズ事業といったグループ会社を持っており、社員数が当時7,000名ほどの企業に転職することにしました。連結決算なども含めてトータルで見れるようになりたかったのです。
勧められた一冊の本で、経営企画への視野が開けた
──ここまでは経理との良い出逢いがありましたが、経営企画への興味はどこから?
5年間ほど経理部で過ごして、一通りのことがわかってきて、「経理は天職だなぁ」と思うようにもなっていました。
そんな頃に、オフィスで隣の「島」だった経営企画室のCFOから、「今は経営企画に興味はなくても、数字に興味があるなら」と一冊の本を紹介してもらいました。それがハロルド・ジェニーンの『プロフェッショナルマネジャー』です。
「この本を読んで、あなたは何を考えますか?」と問われて、私は「会社の数字って、使い方次第、やっぱり面白いなぁと思いました」という幼稚な回答しかできなかったのですが(笑)、それをきっかけに経営企画に興味を持つようになりました。
この本で特に好きなところは「本を読む時は、はじめから終わりへと読む。ビジネスの経営はそれとは逆だ。終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ」という一節。ビジネスではゴールを先にセットし、3年後や5年後にどうなりたいのか。時間や人材、お金に限りがある中で、いかに軌道修正しながら目的地に向かうのか。出来ないのではなく、どうしたら出来るのか。それらを常に考えるのが大切という指針は今も活きています。
つまり、数字は数字として見るだけでは意味がありません。「その数字をどのような切り口で見て、どのように活かすのか」が大事です。数字を活かすも殺すも、それを扱う人次第である、ということは本でも説かれていますね。
その後、この本をきっかけに経営企画室へ異動して、予実管理や上場準備などを担当しながら2年間を過ごしました。過去の実績を踏まえて未来を予測し、実現可能なアクティビティに落とし込んでいき、それらを修正しながらゴールに向かうにはどうすべきか。そういった観点から事業を見ることを学ばせてもらいました。
「現実味のある未来へのワクワク」に惹かれた
──そこから、会社の人数規模も業種も全く変えて、なぜAI inside を選んだのですか?
前職は母体が大きいので、基本的には各部署で業務が分かれていました。経理なら経理だけ、経営企画なら経営企画だけ、というかたちですね。でも、私は経理も経営企画も、それからIRもやりたかったのです。そういう希望ならばスタートアップのほうが叶いやすいと思い、転職を決意しました。
恥ずかしながら、ITもAIも深くは知っているわけではありませんでしたが、いくつかの企業で選考が進んでいくなかで、AI inside は面接する人たちとの相性の良さを感じていました。決め手は(CEOの)渡久地さんとの最終面接です。当時のAI inside は既にAI-OCR市場のトップシェアを獲ていた頃でしたが、それはあくまで出発点であり、「これからAIを世界に届けるんだ」と具体的な道筋のもとに臨んでいく姿勢に魅力を感じました。
AI inside という会社の先行きやどういった戦略なのかも伺えました。私は営業職も経験していましたから、各業界の攻め方についても理解ができましたし、渡久地さんの思い描く道筋の現実性を頭の中で数字に落とし込んでみても、決して突飛ではないと思えたのも大きいですね。言葉で表すなら「現実味のある未来へのワクワク」があったんです。
──そして、2020年8月に入社されました。どのような職務についていますか?
経営企画は、主に予算策定や管理、IRを中心に行いながら、有価証券報告書や決算短信の作成などの開示業務、各種KPI管理効率化のためのシステム統合などを進めています。私はその中で、予算やシステム統合周りを担当しています。
また、経理では月次決算の売上チェック、月次の取締役会に向けての分析や資料作成などを行っています。
部分最適ではなく、いつも全体最適を考える
──直近で進めていきたいこと、変えていきたいことはありますか?
入社した頃は、ユニットごとに予算の考え方などもまちまちでした。まずは「予算策定の方法や考え方を合わせること」を長期的な目標に掲げて、運用を統一するためのフォーマット作成から始めました。予実管理についても各ユニットへ共有や連携することも進めています。
予算策定は、年1回の行事のように作られる会社が多いですが、そうすると策定時期だけ業務ボリュームが増える。当社のマネージャー陣は基本的にプレイングマネージャーなので、業務への影響や工数を考えると、将来的には年1回の策定ではなくローリング予算にするのが良いと感じてます。
また、予実管理を適切に行うためには、日々、経営指標や各種KPIを把握する必要があります。社内には、様々な事業運営のための機能・ユニットがありますが、それぞれの業務で異なるシステムを使っていることもよくある話だと思います。そのユニットにおいては最適なシステムを採用しているとしても、全社的視点でみた時に、数字の管理が煩雑となり、ルールが複雑化してしまう…ということも起こりやすいです。その課題を解決するために、システムを一本化し業務効率化のためのERPの導入を、情報システム部門と連携して進めています。
本来的には経営企画の領域ではないかもしれませんが、私は「部分最適ではなく、全体最適を考えること」が大切だと思っています。全体最適のためには、全社横断的に各ユニットとコミュニケーションをとり、横串で会社の数字をみている経営企画がそのボールを拾って推進していくのが良いと判断し、手を挙げました。
──全体最適で改善を図ってくれる人の存在は、ありがたいでしょうね。
経営企画の役割は、それぞれのユニットに所属するプロフェッショナルの方たちが、良い方向に進めるように最適化を図ることにあると捉えています。この仕事は何をするにも関係者が多くなるものですから、調整能力は求められてきます。
私自身、これまでのキャリアから、「相手をリスペクトする」「仕事を選り好みしない」「先入観を持ち過ぎない」という3点は、仕事を進める上でも大切にしています。
これらは、AI inside が大切にする「7つの価値観」にある、“Stay Simple”や“Respect & Trust”と通ずるところがあり、とても共感しています。
──各部署とうまくコミュニケーションを取るために意識していることは?
各ユニットから、自分の考えや想いを率直に伝えられる機会も多いものです。そういった時に、まずは「その分野の知識を持つその人の視点からすれば、当たり前のことを言っているかもしれない」と真摯に受け止めつつも、全体最適の考え方で見たときにどうだろう?とうまく折り合いがつけられるポイントを考えるのです。言葉の返し方などは選ばなければいけませんが、それらをうまく調整していくのも、私たちの仕事なのだと思います。
──経営企画では一緒に働く方を募集中ですが、どのような方に経営企画にジョインして欲しいですか?
数字が好きで、会計に加えてIRにも興味がある人ならば、基本的にソフトスキルを重視してお会いしたいと考えています。KPI整理やシステム統合業務も担っていますから、一口に「経営企画」といっても、他社とはまた異なる経験が積めるはずです。
AI inside は成長を続けて、超えられなかったような壁を、次々に乗り越えている会社だと思います。「やりたい」と手を挙げれば、実際に任せてもらえるカルチャーもあります。
そういった環境で、私自身もさらに成長したい。その一環で、今は仕事終わりの時間と休日をつかって、ある資格を取るために勉強しています。働きながら受験した人の合格率は1%以下らしいので、もし受かったらお祝いしてください(笑)。
(文・写真/長谷川賢人)
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