AI inside x Stockmark Tech meetup 〜B2B SaaSの機械学習プロダクトマネージャーの取り組みとお悩み公開します〜【前編】
「機械学習プロダクトマネージャーのリアルな取り組み内容を大公開!」をテーマに、AI inside 株式会社(以下、AI inside)とストックマーク株式会社(以下、ストックマーク)のプロダクトマネジャーがプレゼンを実施しました。それぞれの仕事の内容や悩み、キャリアなどについて、前編と後編に分けてお届けします。前編ではAI inside のプレゼンとパネルトークの様子を紹介します。
※内容や肩書・所属は記事公開当時のものです
AIが浸透した世の中へ、ノーコードAIのプロダクト開発の裏側
みなさまはじめまして。AI inside の佐藤と申します。
私は医療機器メーカーで5年働いたのちに、医療系スタートアップ複数社を経て、昨年AI inside に入社しました。元々は画像処理のエンジニアとして働いておりましたが、徐々にビジネスサイドを担当するようになり、現在に至ります。
本日のテーマは「AIが浸透した世の中へ、ノーコードAIのプロダクト開発の裏側」です。弊社が提供しているようなノーコードAIツールを提供すれば、誰もが自由にAIモデルを構築して、業務に活用できるのか?実際に課題となるポイントについてお話ししたいと思っています。
機械学習プロジェクトの85%は失敗?
ガートナー社がAIプロジェクトの約85%は成功していないという発表をし、反響を呼びました。要因は様々ありますが、2021年度のデータを参照すると、下記が大きな失敗要因として挙げられています。
このデータを基に、改めて弊社のノーコードAI開発・運用ツール「Learning Center」をご紹介します。
従来の機械学習プロジェクトは、課題の設定、要件定義、データの検討、学習の前処理という行程を全てベンダーが手作業で行っていました。「Learning Center」を活用することでデータの収集から運用までの作業が従来よりも簡単にできます。
ビジネスでのAI活用を目的とした教育プログラム
機械学習については、PoC(実証実験)貧乏という言葉が流行った時期もありますが、あくまでプロダクトを構成する1つの要素に過ぎません。何よりも、課題や要件が適切に設定されていることが非常に重要です。
ただ、お客様にとってAIプロジェクトにおける課題設計や要件定義などは、依然として難しく感じられる領域です。そこで、お客様によるビジネスでのAI活用を伴走支援する「AI Growth Program」という教育プログラムの提供を開始しました。
弊社は過去に、AIの教育プログラムを提供しておりましたが、引き合いが多く、この度座学からデザインシンキングまで一貫して機械学習の背景知識を学べるカリキュラムを設計してサービスとしてローンチしました。プログラムの中で実際に「Learning Center」を触っていただき、プログラム修了後にお客様の新規事業を支援しております。
また、弊社では機械学習のPMだけではなく、ビジネスサイドやエンジニア、デザイナーを含めた各部門のメンバーで事業開発に取り組む体制を敷いています。お客様の会社に伺い、ユーザーの担当部門の方との議論を通じて活用方法のご提案や、どうプロダクトに落とし込むかをチームで提案しています。
機械学習を取り扱うPMをやっていて大事だと思うことは、機械学習に囚われず、ユーザー体験を最優先で考えることです。例えば、お客様が機械学習を「業務のこの部分に使ってみたい」とリクエストをいただいても、一度課題に立ち返り、目的を掘り下げて、本当に機械学習が必要かを検討しています。また、これらを全てプロダクトに搭載して提供するのではなく、個別のプロジェクトとして検証し、後々プロダクトに入れ込んでいく考え方で切り分けています。
パネルトーク:プロダクトにすぐ取り組むか vs プロダクト以外で検証するのか、の基準は?
ここからはパネルトークの内容から関連するテーマを一部ピックアップしてお届けします。
Q:デザイン思考を取り入れた実践型のプログラムで生まれた事例などがあれば教えていただけないでしょうか?
佐藤:某メーカーさんで工場内の人の動きや物の動きの効率をあげたいという課題を解決するための取り組みが始まりました。内容としては、工場の規模や既存の動線、その使用頻度、荷物の運搬方法、作業人数などをカメラを設置して可視化をするというプロジェクトです。「AI Growth Program」の体系化が進んだので、より良い形でのリリースや他のお客様への横展開を目指しています。
岩瀬:ちょっと突っ込んでもうひとつ教えてください。デザイン思考を取り入れた伴走支援は、いわゆるデザインスプリントに一緒に取り組んだりするようなイメージでしょうか?
佐藤:おっしゃる通りです。工場の現場で働いている従業員の方々や、工場の管理に携わっている方々にご参加いただき、AI inside からはUXデザイナーや機械学習エンジニア、ビジネスサイドのメンバーを揃えて、ダブルダイヤモンドを回して進めています。
岩瀬:イメージが沸きました。すごく面白そうだなという印象があります。
Q:プロダクトにすぐ取り組むか?vs プロダクト以外で検証するのか?この判断基準をどのように考えているのでしょうか?
佐藤:やりたいことの実現には必要なことが多くありますが、現実的なコスパなどを鑑みると、すぐに開発に着手するのは往々にしてインフラ面での大規模投資が必要になりがちなので悪手です。まずは体験レベルでやってみましょう、と考えています。
中尾:導入に伴う効果にどれほどの確証があるかを考えることが大切だと思います。機械学習の場合、一般的なソリューションよりも不確実性が高いです。実体験としては、最初に机上でデータ検証を行い、その結果を元にお客様と議論を重ね、確証度を上げてプロダクト開発に取り組んでいます。
岩瀬:実際にアウトプットを見せることは大切だと思うので、ライトに実行して確証度を高めるアプローチは適切だと思います。
Q:機械学習の知識がないのですが、ニュース記事などでのキャッチアップ以外に、効率的な情報収集方法はありますか?
中尾:私は他社のプロダクトを触ることをお勧めします。NLP(自然言語処理技術)系のサービスだと、海外プロダクトも含めて有名なサービスが体験できます。また、テックブログで手法まで公開してる方がいるケースもあるので、自分たちで似たようなものができないのかを、社内のリサーチメンバーに相談することが、始めやすい情報収集だと思います。
岩瀬:中尾さんが触ってみてよかったなと思ったプロダクトはどのようなものですか?
中尾:DeepLは皆様も使うことが多いのではないでしょうか。例えば「なぜ精度が高く翻訳できるのか」という背景を探ってみると、DeepLは昔、辞書サイトをやってた時代があり、その膨大なデータを元に非常に高い精度を出せていることが理解できます。
佐藤:中尾さんが技術寄りの回答をされたので、違う観点から紹介いたします。私は詳しい人と会話をすることが一番手っ取り早いと思っています。究極は自分でやることが大切です。私も詳しい人間に最初聞きまくって、徐々に詳しくなった経緯がございます。基礎学習の部分ですと、今は無料の学習コンテンツやメディア記事が多く存在するので、キャッチアップしやすいと思います。
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前編はここまでです。
後編ではストックマークのプレゼンとパネルトークを公開します。