生成AIを実装した「DX Suite」、進化のさらに先に見据える未来像とは ー「DX Suite Day 2024」イベントレポート【後編】
AI inside は、2024年7月16日と19日に、主力製品であるAI-OCRサービス「DX Suite」に焦点を当てたフラッグシップイベント「DX Suite Day 2024」を開催しました。当日はユーザ登壇を含む8つのセッションにて、「DX Suite」の最新のアップデート状況や実践的な活用方法などを紹介。大阪・東京の会場には満員御礼の400名以上が参加し好評を頂きました。
本記事では、「DX Suite」の開発と運用を統括するDevelopment Group Use Division Directorの三谷辰秋によるクロージングキーノートにフォーカスし、生成AIを組み込み大型アップデートした「DX Suite」の今後のさらなる進化をイベントの様子とともにご紹介します。
▼イベント全体の様子をまとめた記事
AIとオペレーショナルエクセレンスがもたらす業務の自動化
三谷によるキーノートセッション「これからのDX Suite が提供していく新たな価値」は、AI inside が掲げるミッションの説明からスタートしました。三谷がリードする開発チームでは、さまざまな社会課題に対してテクノロジーをどのように応用するか日々考えており、昨日できなかったことが今日の当たり前になる世界を目指していると言います。
本題となる「DX Suite」の進化を伝える前に、AI inside のビジネス戦略の根幹をなすAIとオペレーショナルエクセレンスについて紹介しました。三谷はオペレーショナルエクセレンスについて、効果的・効率的な業務改革を行うことによって企業が継続的に競争力を維持し続ける改善可能な状態を作ることであると説明。そこにAIを組み合わせることで、業務自動化による人手の削減にとどまらず、その先の新たな価値創出のステップに進めるようになると言います。
AI inside では、AIを使ったオペレーショナルエクセレンスを「プロセス改善」と「プロセス改革」の2段階で考えており、それらをさらに細分化した4段階のステップ、①AIによる部分最適化、②あらゆる情報のデジタルデータ化、③AIを基盤にしたオペレーションの再構築、④最適化モデルによるオペレーションと改善サイクルの確立、が重要と考えています。三谷は、これを実践することで企業は利益を持続的に向上できると説明し、AI inside では、プロセス改善をAI-OCRサービス「DX Suite」、プロセス改革をAIエージェント「Heylix」が担っていくと述べました。
「DX Suite」をさらに進化させる4つの開発テーマ
三谷は、「DX Suite」の提供を通じて解決を目指す顧客課題として3つのポイントを挙げました。1つ目は紙書類のデータ入力作業の効率化、2つ目は繁忙期/閑散期があるデータ入力業務に係る人員や費用のマネジメントコスト削減、そして3つ目は文書のデジタル化によるデータ活用の実現です。
AI inside では、これらの課題解決を加速させるべく、「DX Suite」において4つの開発テーマを設定したと計画を紹介しました。1つ目は、サービスを利用する中で性能が改善されていく「自律的なAI」、2つ目は、技術としてのAIを業務改善に繋げるために不可欠な「業務への組み込み」、3つ目は、欲しい時に欲しい情報を届ける「オンデマンド」、4つ目は、処理ボリュームに対する人員計画の予測を可能とする「業務のシミュレーション」です。
これらのテーマを迅速に実現するために、開発チームと研究チームがタッグを組んで進めていると言います。CEOの渡久地がリードする生成AI・LLMの研究チーム「XResearch」の研究成果を、三谷がリードする開発チームがアジャイルで高速にプロダクト実装していく流れです。
高速レスポンスを実現したデータ化の未来
「業務への組み込み」と「オンデマンド」のテーマに紐づく具体的なアップデートとして、次元の異なる高速化に取り組んでいると紹介しました。現在の「DX Suite」と比較すると、アップデート後の「DX Suite」では20倍以上の負荷をかけた状態で処理速度も20倍以上の大幅改善ができるようになると言います。会場では、実際に社内検証した際の処理速度を公開して根拠を示しました。
三谷は、この実現により、新しいビジネス領域が創出できると述べながら、新たなコンセプト「DX Suite AnyWhere」を披露しました。通常のオフィス内利用における帳票処理が早くなることはもちろん、工場や外出先、店舗の窓口業務などでも帳票のデジタルデータ化が可能になるのです。例えば、お客様と対峙しているその場で、帳票のデータを基幹システムに登録し申し込みを完了した状態にできるといったユースケースも紹介しました。
また、異次元の高速化は、AI-OCRの前後処理で利用されるさまざまなシステムとの連携を容易にするとも説明しました。FAXやメールなどで届くアナログデータの帳票をそのまま「DX Suite」で処理し、リアルタイムレスポンスで基幹システムやERPなどに繋ぎ込むような処理ができるようになるためです。三谷は、システムインテグレーションをせずに「DX Suite」で前後のシステムと直接繋がれるようになる、新たな機能開発を進めていることも明かしました。
人とともに賢くなるモデル的進化体験
「DX Suite」のさらなる進化においては、処理速度の向上のみならず読取精度の向上も重要と述べます。精度向上のための具体的なアップデート内容として、項目抽出機能の強化とデータチェックの自動化の2点を、「自律的なAI」と「オンデマンド」の開発テーマに紐づく内容として挙げました。
項目抽出とは、どのような帳票でも読み取りたい項目を入力するだけでデジタルデータ化することができる、「DX Suite」に実装した生成AI活用の新機能です。2023年12月のリリース以降、ユーザのみなさまから多くのフィードバックを頂き、機能改善を続けてきました。
▼項目抽出の機能紹介動画
項目抽出の仕組みは、全文読取でデジタル化したテキストデータからユーザが指定した項目を生成AIで検索・抽出し、CSVダウンロードできるように加工する流れです。三谷は、AI inside の全文読取の精度は世界一と言っても過言ではないと自信を見せます。つまり、全文OCRの処理に問題はなく、項目抽出の精度向上における障壁はテキストをデータ化した後の生成AIによる処理にあり、生成AI特有の課題に起因していたと実体験から語りました。
生成AI特有の課題であるハルシネーションや回答一貫性の欠如などは、自社開発したLLMの「PolySphere-1」を「PolySphere-2」へ進化させ「DX Suite」に実装することで対策したと言います。世界中がしのぎを削ってLLMを強化している昨今において、我々自身も継続して自社LLMの進化を追求していきたいと意気込みました。
▼「PolySphere-2」活用の「カスタマイズSLM」に関するプレスリリース
AI inside では、「PolySphere-2」を実装した項目抽出の読取精度と、他社LLMを実装した項目抽出の読取精度を比較しました。三谷は、比較対象としたLLMを世界的にレベルが高いと言われている有名なモデル群と紹介しつつ、「PolySphere-2」はそれらと比較しても圧倒的な精度の高さであると力説します。
三谷は、読取精度の幅にも注目を促します。例えば、A社LLMの読取精度には0-90%の幅があり、B社LLMには19-89%の幅があります。幅が広いということは、項目によっては全く読み取れないケースがあるということです。「PolySphere-2」は82-98%の精度であることも強みであると述べました。
さらに、項目抽出には、使えば使うほど読取精度が上がる仕組みも実装すると明かしました。ユーザの作業は、通常どおり「DX Suite」に帳票をアップロードしてデジタルデータ化し、読み取った内容に誤りがないかデータチェックを行ってCSVをダウンロードするだけ。このフローは変わらないものの、プロダクトの内部ではユーザがデータチェックした内容をAIが自動で参照して個別学習がなされると言います。これにより、項目抽出を使っているだけで、帳票の読取精度が向上していくのです。
三谷は、この仕組みでは情報が「PolySphere-2」の学習に使われることは無いと補足します。ユーザ各社の環境内で完結する仕組みとなっているため、生成AI活用で懸念されるセキュリティ面も安心してご利用いただけます。
加えて、項目抽出の強化でこれまで読み取れなかった帳票が読み取れるようになったとしても、人によるデータチェック作業は減らせない、というユーザの悩みを代弁しつつ、AIがAIによる出力をチェックする機構を作ることで、人間のチェック作業を最小化すると述べました。これは工数削減だけでなく読取精度の安定にも寄与します。
独自のダッシュボードで業務効率の安定化を実現
本イベントで紹介する最後のアップデートとして、チーム管理を円滑にするダッシュボード機能を紹介しました。これは、「業務のシミュレーション」の開発テーマに紐づく取り組みです。大規模なオペレーションになればなるほど必要になる機能だと三谷は補足します。
現在の「DX Suite」では、読み取りたい帳票のユニットを作成してデータチェックをする個別のワークフローの状況を確認することはできますが、チーム全体でどれくらいの量を処理できているかは確認できません。三谷は、チーム全体の処理状況が確認できるようになるダッシュボード機能を開発中と紹介しました。
これにより、チーム全体でどれほどの量を処理していて、個人にどれほどのタスクが集中しているのかなどの状況を可視化することができます。業務改善ができる状態を整えチーム全体の生産性向上に寄与します。また、DX推進部など「DX Suite」の導入を推進した部門がその導入効果を説明できるように支援したいと、開発に取り組む想いを伝えました。
ユーザ・パートナーとともに非常識を常識へ変え続ける
セッションのまとめとして、自律的なAIによって「PolySphere-2」とともにみなさまの業務の自動化レベルを進化させ、オンデマンドで欲しい情報が欲しいタイミングで正確に手に入る状態を作り、全ての基幹システムの入口になる、加えて、予見性を高めることでマネジメントの課題まで解消する。「DX Suite」をそんなサービスにしていきたいと展望を述べました。
三谷は、AI inside のミッション「AI テクノロジーの妥協なき追求により非常識を常識に変え続ける」を改めて紹介しながら、皆様の業務を継続的に改善してオペレーショナルエクセレンスを達成し業績があがっていく、そんな世界を皆様と一緒につくっていきたいと想いを伝えセッションを締めくくりました。
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