AI inside が人事制度を「OKR」から「MBO」へ切り替えた狙い
2023年4月から運用が始まったAI inside の新しい人事制度。これまではアメリカ企業を始め、スタートアップでも採用が進む「OKR(Objectives and Key Results)」型を導入してきましたが、新人事制度では「MBO(Management by Objectives)」型に切り替えたことが、大きな変化です。
MBOにフォーカスした理由を、今回の新制度設計に携わった人事担当は「現状のAI inside のフェーズを考えると、MBO型がより適していたからです」と話します。新人事制度に至った背景を、人事担当の風間に聞きました。
※内容や肩書・所属は記事公開当時のものです
個人の目標が、会社の目標と「正しく」つながっているのか
──2023年4月から、AI inside の人事制度を変更するに至った、最大の理由は何でしょうか?
それぞれで立てる個人目標が、会社全体への貢献と、確かに結びついていることを明らかにするためです。掲げられた全社目標に対して、各個人やユニットが目標を設定・達成することで、売り上げ増やシステムの改善につながるという考え方が元になっています。自分が果たすべき役割、貢献すべきことが明確になり、業務に効果的かつ効率的に取り組めるようになるための変更といえます。
現在のAI inside では「ユニット制」を取り入れていますが、もともとは効率的な意思決定を素早くすることが目的でした。AI inside のバリュー「Rules of Innovation」にある「Get Making」の実現にもつながります。
ただし、それが成り立つには、各ユニットが手掛けていることが全体の目標と結びついているという「相互の信頼関係」が欠かせません。本来は、その信頼関係を確認し、連携するための場が必要なのですが、これまでは正しく運用が出来ておらず、OKRと人事評価の関係性も明確になっていませんでした。
なので、それを変えなければならないと考えました。自分の目標がチームの目標につながっているのか、さらにディビジョンやグループの目標、そして会社の目標へつながっているか。個人目標と評価のリンクを実感できないと、貢献しようという意欲は満たせません。
そこで、2023年4月からは、OKR(目標と成果指標)型の制度から変更し、MBO(目標管理制度)型の目標設定をあらためて導入しました。MBOを用い、個人やグループごとに目標を設定し、その達成度合いで評価を決める評価制度です。
会社全体の目標は、CEOの渡久地をはじめとする経営陣が音頭を取って定め、さらにグループ、ディビジョン、ユニットの長がそれぞれに結びつくように落とし込んでいます。
今、必要である「Do it right」を実現するためのMBO
──その上で、OKRからMBOに切り替えたのは、なぜでしょうか。
確かにOKRはスタートアップを中心に多く採用されているのですが、企業にとって「合う」と「合わない」があると考えています。
いまのAI inside においては、着実な目標達成で「基盤を整えること」が必要だからこそ、OKRからMBO型に変更したんです。「ここに行きたい」と定めてから行動を決めていく、バックキャストな考え方ともいえます。
──MBOの目標設定で、押さえておくべきポイントは何でしょうか。
MBOは「SMARTの法則」に基づいて目標を設定することが欠かせません。
今回の制度変更にあたって、渡久地は「Do it right」という言い方をしています。「Get Making」を本当に実現して、前進し続けるために「ちゃんとやっていこう」という意味合いですね。全員の「自らが果たすべき役割、貢献すべきこと」を明確にして、きちんと達成していく。その進捗を確認するためには、OKRよりもMBO型の制度が合っていると考えたのです。
人事制度とは「従業員の成長を促すこと」が目的です。会社の財産である従業員が成長することで会社も成長しますが、その成長を「測ること」は難しいものです。そこでMBO型の評価制度を用いると、「従業員の志向」と「会社の志向」が一致していることで、互いの成長のつながりを認識し、測りやすくなると考えています。
人事評価はゴールではなく、ゴールに到達するための通過点
──従業員の「成長」とは、どのように測られるものだと考えますか。
個人の成長と会社の成長、そして「やりがい」をうまく重ね合わせることが重要です。なぜなら、会社の目標と自分のWill(意志)が重なっていないと、目標を達成しようにも「何のために実現するのか」が見えにくくなるからです。
そこで「成長」と「やりがい」を重ねるための一つの考えとしては、ゴールを設定することです。これは、短期的なゴールではなく「ビジネスパーソンとしてどうありたいか」であり、そこへたどり着くために、人事評価や人事制度、そして1on1の面談があるわけです。半年毎に実施する人事評価はゴールではなく、ゴールに到達するための通過点です。
また、上司から言われたことをやるだけではなく、「どうありたいのか」と「そのために何をするのか」を個々人が考えることで、自分の目標と日々の業務はつながりを増し、仕事がもっと楽しくなると考えます。上司や評価者は、メンバーに「達成が楽しいと思える目標」をアサインして、その人の「向いていること」を見つけたり、ストレッチゴールを達成したりするといったマッチングの妙が必要です。
例えば、一人で進める仕事には限界がありますから、ビジネスパーソンとしての次のステップは「どれだけ他人を巻き込めるか」が大事になってきます。上司が、人を巻き込む形の仕事を与えなければ、その人は実現する機会を与えられないですよね。そういった目標に挑戦してみることを上司が提案し、それが達成できれば人として成長でき、ビジネスパーソンとしてのスキルも向上するので、結果的に評価も上がります。明確な目標を繰り返し提示して、一定のレベルに達したら、今度は自分自身で目標を立てられるようになるでしょう。
「組織貢献目標」を設定した意味
── 新人事制度の特徴はありますか?
今回の人事制度では、個人が掲げる「業績目標」とは別に「組織貢献目標」を設定しています。100%の評価を得るためには、組織への貢献が欠かせない設計になっています。
ユニット単位で組織が動き、それぞれで個人目標を達成することを重視すると、どうしても発生してしまう「ユニット間に落ちてしまうボール」を拾いきれない状態になりやすいものです。今後、組織が拡大していくほどに、そういった組織全体の改善につながる仕事は重要性を増していきます。
そこで「組織貢献目標」を導入しました。自分が属するユニットや自分自身だけでなく、「会社全体がよくなるために何ができるか」をそれぞれが考え、取り組んでいってもらうための仕掛けです。
── それは数値で出すのではなく、定性的な目標でよいのでしょうか?
今後、「組織貢献目標」の定義や定め方がアップデートされる可能性もありますが、基本的には定性的な設定でよいとしています。まずは社員全員が「組織に貢献できることは何か」に目を向けることが第一歩であり、大切だと考えています。自分の仕事だけでなく横の繋がりを意識することで、組織全体のカルチャーも変わっていくはずです。
人事制度とは「その会社が、どのような人材を育てたいか」を示すもの
──社員数が増えたり、組織構成が変わったりした場合、さらに人事制度は見直されるのでしょうか?
そうですね、変わるべきだと思います。根本的な考え方は変わらないかもしれませんが、会社が大きくなれば、任される領域や難易度も変わるはずです。組織の変化に合わせて再設計していくべきですし、現場と一緒に制度を構築していくことが大切です。
私自身、大事にしている考え方の一つが「人事制度とは、その会社が、どのような人材を育てたいかを示すものである」ということです。会社が最終的に見たいのは、個人が成長して、いかにマネージャーやエキスパートとして頭角を現すことができるか。そして、大きな仕事をより任せられる資質を持つかどうかです。
究極的に言えば、「どのような人材ならば、その会社で活躍できるのか」が全員わかって行動できていれば、人事制度なんて必要ないのかもしれません。しかし、新入社員や外部から参画する人は当然わかりませんから、会社としての方針を打ち出すことが欠かせません。
自分が何をしなければならないか、どう成長すれば会社に貢献できるか、会社の成長と自分の成長がアラインしているかどうかを考えられれば、自分で自走できるはずですから。
(文・写真/長谷川賢人)
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