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「生きるとは何か」を考え続ける探究家が出会った、AI事業が持つ「楽しみ」と「意義」の両立【MY CAREER STORY】

「誰もが使える世界規模のAIプラットフォーム」の実現を目指すAI inside。今回は、お客様のビジネス課題解決のために「Learning Center Forecast」(現在は「AnyData」に機能統合)の活用提案を行ってきたData Science Unitを率いるManagerの渡辺康仁にインタビュー。彼が考えるAI事業が持つ「楽しみ」と「意義」について聞きました。

渡辺康仁(Yasuhito Watanabe)
Manager of Data Science Unit
大学院卒業後、大学教員や海外での研究活動を経て、株式会社aiforce solutions へジョイン。吸収合併により2022年5月にAI inside へ入社。主に「AnyData」の導入支援を通じた案件対応と、その案件対応効率化のための社内提案に関わる。順天堂大学の医学研究科の客員教授として、AIやデータサイエンスに関する講義も担当。好きなことはボードゲーム、体を動かすこと、メディテーションなど。

※内容や肩書・所属は記事公開当時のものです。

小学生のときに「生きるとは何か」を考え始めた

──どのような子ども時代を過ごしていましたか?

幼い頃から生き物に興味を持っていて、自然の中で生き物を観察することが好きでした。その興味がもとになって、小学生のときに、自分にとって「生きる」とはどういうことか、何を持って「生きる」と言えるのか、という問いを考え始めるようになりました。

なかなか難しい問いではありましたが、一つ導き出した考えは、何かしらの研究をして、その活動が自分の名前と共にどこかに残れば、自分にとっては「生きた」といえる証が残るだろう、と。その考えは、その後の活動の方向性を決めるような役割を果たしているのではないかと思います。

進学先の高専では研究活動の一環として、「遺伝子的アルゴリズムを用いた4足歩行ロボットの歩行パターンの進化的獲得」をテーマに取り組んだことがあります。「生き物が好き」という考えを持っていたので、生物の動きのシミュレーションができたことは、強く記憶に残っていますね。

──そのまま工学系に進まれたのですか?

いえ、大学時代には「分子動力学」を学んで、水素結合のネットワークのダイナミクスを観察するシミュレーションに携わり、大学院では「神経科学」の分野で神経活動や神経の発達についての研究を行っていました。神経系を学んだのは、「生きるとは何か」を含めて「人間は物事をどうやって考えるか」というようなことに興味を持ったからです。この研究活動について論文を書いて発表することで、子どもの時に考えた「自分の名前と共に研究成果を残す」についても取り組めました。

──そこから、AIと関わりを持ち始めるのは、どういった経緯があったのでしょう。

自分自身が生きた証を残すことに取り組みながら「人生の残りの時間で何をしていきたいのか」を大学院生の時に改めて考えてみたんです。そこで、探究活動を続けるにしても、ビジネスにも関わっていきたい、と考えるようになりました。

その後、学位を取得し大学で教員をしたり、海外で研究活動を行ったりする中で、スタートアップやハッカソンなどビジネスに関するイベントにも参加しました。神経や遺伝子、タンパク質の相互作用といった研究の中でデータ分析を行っていましたから、ビジネスの中でそのスキルを活かそうと考えました。ビジネス活動として、最初はコンサルティング企業に勤め、その後独立しました。個人事業主をしていたときにご縁があってaiforce solutionsの方々と出会い、データ分析の活動に一緒に取り組む機会をいただきました。

──それが後のAI inside に繋がるわけですね。

そうです。そうして交流が始まり、aiforce solutionsのCEOだった西川智章さんから、AIの発展に伴う人材不足の課題を伺いました。具体的には、当時の調査ではAIを正しく活用できるIT人材が2030年には約59万人程度も不足すると見込まれているというのです。西川さんたちはAI未経験の社員でもビジネスで活用できるAIモデル構築ツールを提供することで、その課題に挑もうとしていました。

お話を聞いて、すごく面白そうだな、と感じました。小学生の頃から「生きるとは何か」「何を人生で達成したいのか」といった問いを考えてきた私からすると、西川さんたちの挑戦は、人間は「楽しみ」と「意義」が充足されているときに心の平静が得られやすい、というロルフ・ドベリが書いた『Think clearly』の考えにも重なったからです。

西川さんたちが行っている活動は、何かを創造し、それが社会の変化を促し、社会がうまく進展するよう貢献していると理解しました。まさに「楽しみ」と「意義」の両方を満たしているようなビジネスです。そういった活動は、他と比較してもなかなか無いもので、非常に面白そうだと感じたのです。

「AI導入支援」と「課題解決プロセスの効率化」をミッションに

──そういった経緯で、aiforce solutionsにジョインされたのですね。その後、どのような業務に携わってきましたか?

入社後は、AI運用の内製化を推進するAutomated Machine Learning(自動機械学習)ソフトウェアであるAIモデル構築ツールに携わらせていただきました。2022年5月のAI inside との合併後には「Learning Center Forecast」として発展し、現在はマルチモーダルなAI統合基盤「AnyData」の学習基盤を担っているものですね。

私の主な役割は2つで、まずはお客様のビジネス課題を解決するために「AnyData」の活用の仕方を提案すること。「この課題に対しては、このような使い方が可能かもしれません」といった形での導入支援です。さらに、お客様がより短時間でビジネス課題を解決できるように、新機能の開発についてもエンジニアとのディスカッションを通じて提案しています。

──AI活用人材を増やすべく教育活動として大学の客員教授も務めているそうですね。

ええ。順天堂大学の医学研究科で、産学連携講座としてAIやデータサイエンスに関する講義を担当しています。講義が進むに連れてAI活用に関するディスカッションがより具体的になっていけるように心掛けています。

「人間の能力を拡張するもの」

──技術が進化し、業務が自動化されていくことは、人間にとってどのような価値を生むのでしょうか。

難しい質問ですね。

一つ言えるのはAIモデル構築ツールは「人間の能力を拡張するもの」です。人類の歴史を振り返ってみると、人間が言葉を発見し、それを残す方法として文字が生まれ、文字により他の人に言葉で表現できる情報について伝達の再現性が上がりました。さらに印刷技術で多くの人に伝えられて、再現性の効率も上がった。

では、さまざまなデータを取り込んで生成したAIモデルで需要予測や外観検査などができるようになるとは、どういうことなのか。これは人の頭の中にあって、これまで言語化が難しかったような知見についても、伝達の再現性と効率性を図るものだと考えられます。現在では完全に同じとはいえませんが、アウトプットとして似た結果を出せる意味では、生成したAIモデルは人間の一部の機能を模倣して出力するようになっています。

──人間とAIが協働して仕事をすることは決して否定的ではないと思えてきます。

AIに限らず、人類はこれまでも、程度の差はあれ、新しい技術や道具について同様の取り組みを繰り返してきたのではないかと思います。例えば、衣服は皮膚の機能を、眼鏡は視覚能力を拡張するものです。いずれも我々が身に着けて使い続ける中で安全性が高められるとともに、人々の生活を豊かにしたり、生活の中での選択肢を広げたりするようになったと考えます。

我々が提供するサービスについても、これまで普及している既存技術と同様に改良を重ねる中で、生活を豊かにするための選択肢の広がりの1つとなるような貢献ができればと考えます。

未知なるものへの探求に、飽きることはない

──これからは「AnyData」の仕事がメインになるかと思いますが、「AnyData」は従来のものとはどういった違いがあるのでしょうか?

顧客の伴走や機能開発などは変わらずに取り組みますが、大きなところでは「AnyData」の進化によって、さまざまなデータを組み合わせて、より高度なことができるようになると考えています。
これまでの「Learning Center Forecast」は、テーブル系のデータを扱っており、そのデータの一部には人が用意する部分があります。「AnyData」では取り込めるデータの種類がより広がっていき、人によるデータ用意作業が軽減されるようなことが期待されます。

──あらゆるデータのデジタル化やその活用が一層進むということですね。

そうですね。その中で、人間が関わる各ステップがより簡単になるような方向で進んでいくと良いのではないかと考えます。この取り組みの中で、私たちの仕事も変わっていくことを期待しています。

── AI inside のData Science Unitとしては、今後どのような目標を持って活動される予定なのでしょうか?

現在のユニットメンバーは、それぞれが高い能力をお持ちの方々で、得意分野や性質は様々です。メンバーそれぞれが活躍でき、独立性を保ちながら活動できるような体制をとっています。同時に、役割分担をしつつ、関わるプロジェクトの必要に応じて複数名で取り組むような形で進める場合もあります。一つの案件に全員が関わるという形はあまり取らず、それぞれが各々の案件に対応している形が多いです。

私たちはaiforce solutionsの頃から「自動化」に注力してきており、今後も続けていければと思います。自動化はモデル作成の一環ですが、その活用であるとか、モデル作成のためのデータの準備、業務自体の自動化も含まれています。

仕事を属人性の枠にはめず、担当者が交代しても結果のバラつきを少なくするためにも、自動化による標準化ができれば良いのではと考えています。私たちの目指す自動化は仕事を奪うものではなく、活躍の場を広げることに繋がれば良いですね。

──AIを扱う企業が増えていますが、その中でもAI inside のアピールポイントは何だと思いますか?

「AIで、人類の進化と人々の幸福に貢献する」というパーパスは、大きな意義になりうるのではないかと思います。単に新しいものを作りたいから作るだけではなく、深く思いを馳せられるパーパスやミッションなどを意識して、大きな視点で物事を考えながらビジネスに取り組んでいることは、私たちの一つのアピールポイントではないかと考えています。

今のところは、「楽しみ」と「意義」を持って取り組んでいます。その楽しさの背後には、未来がどうなるかを予測して、それを知りたいという好奇心があります。そして逆説的ではありますが、未来がわからないからこそ、予測したいのだとも思います。

世界と技術は常に変化し、発展しています。それに伴い、私たちが取り組むこともどんどん変わっています。新しいものを作るというのは、常に未知なるものへの探求です。その探求に飽きるということはないのではないか、と感じていますね。

(文・写真/長谷川賢人)
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