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生成AI・LLMの新時代へ。AI inside が提供する伴走型リスキリングプログラムがユースケースを重視する理由

AI inside は「生成AI・LLMの伴走型リスキリングプログラム」の提供を開始しました。このプログラムは、企業や団体が生成AIを効果的にビジネスに活用するための一環として、顧客課題の解決に繋がる「ユースケース」の創出と、その実装を全面的に支援します。

AIテクノロジーとその事業化に深い知見を持つプロフェッショナル人材が集結した、経営層向けAI実装コンサルティングチーム「InsideX」が伴走。生成AIの概要や適切な活用方法、プロンプトエンジニアリングに関する基礎知識などを、短期間で習得できるように設計しています。

従来は「AI Growth Program」として多くの企業へ提供され、AI人材の社内育成からDXを推進するサポートをしてきましたが、さらにそれを拡充した形です。これまでは学習の対象が予測AIや識別AIだったところに、昨今、ビジネスの現場を激変させつつある「生成AI」についても対象に含み、より実践的かつ価値の高いプログラムへ進化しました。

さらに、AI inside が持つAIテクノロジーを複合的に活用しながら、一気通貫で企業を支援します。目指すは「生成AI・LLMのユースケース1万件以上の創出」です。今回は、プログラムの必要性やその狙いについて、推進者の一人である西川智章に聞きました。

西川 智章  / Tomoaki Nishikawa
Professional Service Division/  Inside X Unit
PwCコンサルティングやAIベンチャーにて主に日本並びに東南アジア地域の金融、製造、農業インダストリー向けにAIビジネスコンサルティングやビックデータ解析サービス、先端技術を活用したビジネスモデルの構想・計画策定などを支援。これまで、事業会社等にて中国事業やビックデータ事業部、AI事業の立ち上げなどに従事。その後、株式会社aiforce solutionsを創業し、代表取締役社長を務めた。2022年5月の吸収合併を機にAI inside にジョイン。東北大学 データ駆動科学 AI教育研究センター 特任准教授(客員)、米国公認会計士(ワシントン州)、人工知能イニシアティブ会員、データサイエンティスト協会会員。日本語・中国語・英語のトリリンガル。

※内容や肩書・所属は記事公開当時のものです

「自分自身でユースケースを構築できる人材」が必要に

──今回のプログラム提供の狙いは?

生成AIを使って「何ができるか」、まだ多くの人がイメージが湧いていないと思います。例えば、銀行で稟議書を大量に作成したり、不動産業での不動産評価を自動で行なったり、広告クリエイティブの画像と広告コピーを大量に自動生成したり、といった具体的な業務効率化に活かせることが多くある。

これまで人の手作業でしかできなかった業務、ベテラン社員の経験知が必要で属人化していた業務、既存の技術では効率化が不可能だと考えられていた業務などの課題が、生成AIの登場により解決できるようになってきました。これは驚くべき技術革新だと思います。

各業界の知識を有した上で、AIを活用できる人材になっていただくのが、この「生成AI・LLMの伴走型リスキリングプログラム」を提供する狙いの一つといえます。あるアンケートによれば、企業内で全社員が生成AIを利用できる環境を構築したとしても、実際に利用しているのは約5~10%。また、利用している社員も返信メールの本文案を作成したり、アイデア創出や文書要約など、真の企業価値に繋がるレベルで利用している会社は少ないと言えます。生成AIを収益拡大やコスト削減に繋げることができる企業とそうでない企業の生産性の格差は今後、広がると見ています。

──プログラムの内容で重視していることは?

ユーザー自身がユースケースを考え、それを実装できるようになることですね。つまり、「どう使うか」という具体にまで落とせることです。

AI inside のプロダクトであるAIエージェント「Heylix」では、このユースケースを「Buddy」と呼び、扱える人を「Buddyアーキテクト」と位置づけていますが、彼らは「自分自身でユースケースを構築できる」という意味では同じです。

AIを活用すると、効率化や新しい価値の創出が加速します。例えば、デザイン業務でAIを使いこなせる人と使いこなせない人がいた場合、前者は作業が格段に早くなります。従来は、顧客ヒアリングからデザイン案を形にしてプレビューを受け、顧客の要望に合わせて修正して……と10往復ほどして、1カ月かかってデザインがやっと仕上がっていたとしましょう。

ここにAIが入ると、ヒアリングの段階でデザインをその場で1000案ほど自動生成し、その中からブラッシュアップするものを選び、修正していく。これなら1ヶ月ほどかかっていた作業が2日程度で終わる可能性さえあります。このような差が出ると、競争力や仕事の量に大きな影響を与えます。単純に、同じ作業をしても15倍稼げてしまうかもしれないのです。

──こういった変化は、どれくらいのスピードで実現していくのでしょうか。

AIによる格差が開くのは今後1〜2年だと思います。例えばスーツ業界では、お客様の要件に合わせてフルオーダーの業務は残りますが、セミオーダークラスの業務は、ほとんどが自動化されるようになります。さらに、フルオーダーの業務は、一握りのトップ人材のみしか手がけられなくなると考えています。建築業界では、トップレベルの建築デザイナーは、お客様の細かなニーズをヒアリングし、素晴らしい建築デザインを書く事が出来ます。一方で、お客様が、「こんな雰囲気の家が欲しい」と生成AIに問いかけただけで、デザイン案が自動で生成され、さらに、AIエージェントと会話しながら、デザイン案が出来上がります。8割の業務はこのようにAIが代替できるでしょう。

自動生成をもとにした効率化は、企業内でも起きていく

──AIによる仕事の変化が、各企業内でも起きていくのでしょうね。

その通りです。ただ、ユースケースを洗い出すのは非常に難しいのです。実際のところ、ある企業では1万人ほどに生成AIのアカウントを発行していても、実際に活用しているのはメール文の作成程度とも聞きます。今はまだ手探りのフェーズなのかもしれませんが、それでは結局使われなくなる可能性もあります。

──今まで提供してきたプログラムにも通じますが、実際に使える人が増えないと、社会全体へ浸透していかないというわけですね。

やはり、AIでビジネスそのものに新しい付加価値をつけることが重要です。また、教育も大きな要素で、社会人だけなく、大学のカリキュラムや高校の授業にまでAIの基礎学習が組み込まれることで、より多くの人がAIを理解し、活用できるようになるでしょうね。

私たちが提供するプログラムでも、最初のステップにはそういったベーシックな教育も含まれています。それを踏まえた上で、自らユースケースを構築できるようになるために、大量の事例を伝えていきます。

例えば、過去5年分の財務諸表を入力すると、自動で財務状況を分析するユースケース。コンサルタントや証券アナリスト、銀行員が作る企業のアナリストレポートも自動作成できます。財務データだけから会社の概要や売上を分析し、さらには競合企業の情報も基に分析します。そして、SWOT分析を行い、経営課題のサマリーを出します。さらに、過去の売上推移を基に5年間の売上予測も出します。これらすべてを一瞬で作成できるのです。

──すごい効率化ですね。薪で火を焚き調理していた時代に、ガスレンジが出てきたようなインパクトを感じます…。

馬車しか走っていない道に、フォードが自動車を出してきたくらいの(笑)。

他にも、デザインの仕様書からパワーポイントの資料を自動でまとめることもできます。この作業は単一のAIではなく、いくつかのツールを組み合わせて行なっています。

あるアパレルメーカーがお客様に提案する際に、まずはトレンドや企業ポリシーを元にデザイン仕様書を生成します。その後、新しいトレンドや参考となるデザインをもとに特徴を取り出して、デザインの詳細を整理。トップスやネクタイの仕様、材質や色、長さ、サイズなどを考慮して、1日に1,000パターン以上は可能なほど、デザイン案を無数に作ります。その後に仕様書とデザイン案を元に、提案書のパワーポイントを自動生成するんです。

──今のところは効率化が主な目的に感じますが、これからはどう変わるのでしょうか。

現状では効率化が主なユースケースですが、真のビジネス価値は仕事の中身自体の変革や新規事業創造にも広がっていくでしょう。そのためにも「AIテクノロジーで何ができるのか、どこで使われているのか」を理解することが最初のステップです。さらに、生成AIだけでは限界があるので、予測AIや識別AIも組み合わせ、マルチモーダルで考える必要があります。

──各社のAIツールには特徴があるのを知った上で、組み合わせることも大切だと。

AIツールをレゴブロックだと見立ててみましょう。レゴブロックはただの部品であると同時に、それらをどう組み合わせるか、どういう形にするかは人間の想像力に依存します。

例えば、恐竜の形にもできるし、飛行機だってつくれます。そこに「滑車」や「透明パーツ」が増えると、途端に自動車が作れるかもしれない、と思いつく。その組み合わせ方、つまりはユースケースを理解できているかどうかが、AIツールを活用するポイントなんです。

フレームワークを検証して厳選。伴走型プログラムで最短距離の学習を

──「生成AI・LLMの伴走型リスキリングプログラム」は7月から提供されていますが反響はどうでしょうか。

まだ営業段階ではありますが、具体的には金融業界での導入が進んでいます。メガバンクを始め、地方銀行は危機感を持って取り組まれていますね。低金利時代で金利だけで稼げなくなっているので、新しいビジネスモデルや業務の全自動化が急務となっています。

金融業界はテクノロジーの導入が進んでいますが、まだまだ手作業の余地も多い。いずれは業務が全自動化に向かっていくとしても、ドメイン知識や現場課題の理解も必要ですから。

──どのようなプログラムを用意していますか?

ユースケースの理解のために、実際に体感してもらうためのハンズオンやワークショップがセットになっています。「Heylix」を使ってプロンプトや「Buddy」の生成について知る他にも、あるフレームワークに沿ってAIツールを活用し、それを講評するといった進め方もします。少人数制のワークショップでアイデアソンのような形式をとることもありますね。

実は、AIツールを活用するためのプロンプトには、一定のフレームワークが存在しています。それらを理解してもらえば、出てくる結果がより精度高くなります。私たちは、すでに公開されているフレームワークの情報を集めて検証し、厳選して、実際に使えるものを提供しています。

アメリカでは「プロンプトエンジニア」という職業も出てきているほどに、プロンプトの書き方一つで出てくる結果が大きく変わるので、それほどの重要性があります。もはや「データサイエンティスト」のように新しい職種が生まれたものだと捉えて、学び直してしまったほうがいい、というのが私の考えです。

Excelも、AIも、「使いこなせる人」は効率を上げられる

──プロンプトやフレームワークについて調べたり検証することは個々人でも可能ですが、通常業務の傍らで、進化の速いそれらをキャッチアップするのは大変ですね。

だからこそ、伴走型である私たちのプログラムが価値を発揮するのだと思います。現状では多くの人がAIを使えていないのは、極めて「もったいない」状況です。

基本的には、多くの企業でプログラムを導入したいという反応をもらっています。問題は予算と優先度ですね。課題意識がどれくらい高いのかも各社によって違います。

過去の「AI Growth Program」はある企業で1年間かけて大規模に行われました。その企業はDXに選定されていましたが、AIに関する理解にはギャップがまだ存在していました。今後も基礎研修と同様のレベルで、それこそ「名刺の渡し方」と同じくらいに、新入社員はAIについても必ず知っておくべき知識のようになっていくでしょう。

──日本企業は今、急速に変化しなければならない状況にあると思います。浸透度が遅い一方で、だからこそ投資する価値があるとも考えられる。

中国やアメリカはすでに生成AIのビジネス活用が進んでおり、マーケットも職業もある。ところが日本はまだ職業もなければ雇用機会もほとんどありませんから。日本は後追いの状態です。5年後には変わるかもしれませんが……もしかすると、あまり変わっていないのかもしれません。

今は、ビジネスツールとしてはMicrosoftが業界スタンダードになっています。将来的には、AIについて知らずとも、Microsoftのツール上に置かれたボタンを押せば、裏側でAIが走って何かしら出力してくれる未来もあるでしょう。

しかし、どれほどツールが高機能になっても、使いこなせるかどうかは常に問題です。例えば、Excelは多くの機能を持っていますが、関数などの機能を使いこなせる人とそうでない人とでは、効率が大きく異なります。この差が今後さらに広がる可能性はありますね。

(文・写真/長谷川賢人)
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