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「”めんどくさい”をなくしたい」、 非エンジニアが10日間で2つのAIを開発できた理由

最近の新聞やニュースサイトでは、「AIで予測」「AIカメラを導入」など、さまざまなAI活用についての報道が、多く取り上げられています。少し前までは、「AIはまだまだ未来のもの」と考えられていましたが、すでに様々な分野での活用が広まっています。

その一方で、AI開発には高度な専門知識や多額のコストが必要となるため、多くの企業では、AI人材の採用や社内教育によって開発を内製化しようという動きもみられます。

そんな中、建設DXを牽引するスパイダープラス株式会社では、AIに関する専門用語「アノテーション*」や「推論*」を知らなかった社員が、わずか10日間で2つものAIモデルの開発を実現しました。今回は、本プロジェクトを担当した駒井さんに、AI開発に至るまでの背景や開発秘話などをお伺いしました。

*アノテーション:画像や音声などあらゆる形態のデータにタグを付ける作業
*推論:学習済みのAIモデルにデータを入力して得られる出力(AIを”使う”こと)

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スパイダープラス株式会社 BPOチーム チームリーダー 駒井 隆也さん


発想の起点は「自動化しないかな」という日頃の悩み

ーー 駒井さまの普段のお仕事を教えてください。
駒井さま:私たちの会社は建設業界に向け、建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」を提供し、業務のデジタル化やペーパーレス化を支援しています。

その中で私は、アプリに加えて提供しているBPOサービスを担当しています。建設業のお客様の業務の1つに、設計図通りにきちんと施工されているのか確認する建設現場での検査があり、この検査を行うために図面や検査箇所の確認など、事前に様々な準備が必要となります。このお客様の負担を削減すべく、当社としてBPOサービスを提供することになりました。私は入社以来、当社のカスタマーサービスを担当していたのですが、BPOサービスの立ち上げメンバーとして参画し、現在はサービス推進を担っています。

ーー 今回、どのような経緯でAI開発を行うことになったのでしょうか。
駒井さま:私たちは建設DXを進める中で、建設現場の方々により良い働き方が提案できる企業になるための、新しい手段を模索していました。当社には、10年以上サービスを提供してきた中で蓄積されたデータがあります。このデータを活用してお客様へ新たな価値を提供するためには、AIの活用が必要でした。しかしながら、AI開発には専門知識を有する人材の確保や、外部に委託し自社仕様に開発するにも膨大なコストが必要となります。また、パッケージ化されたサービスでは、柔軟性に欠けるためうまく業務にフィットしないなど、AI活用までに高いハードルがありました。

そんな中、AI inside さんの「AnyData」を知り、ノーコードかつ低コストで利用できるのなら自分たちでAI開発を試してみようという話になり、私もそのプロジェクトに参加することになりました。いくつか社内で開発モデルを検討する中で、自分の業務でも活かせるかも、と思い提案したところ、私の業務であるBPOサービスの社内業務自動化に向けたAI開発に取り組むことになりました。

ーー AIを自分の業務で活かせるかも、という発想はどのように生まれたのでしょうか。
駒井さま:単純に日頃、自分が作業していて、めんどくさいところを自動化したい、という気持ちが強かったですね。「この作業が無くせる可能性があるかもしれない」という淡い期待から取り組みを始めました。

シンプルな作業の積み重ねで、AIモデルを10日で開発

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種類別にラベル付けをした「アノテーション」された図面

ーーAnyDataを触ってみての印象はいかがでしたでしょうか。
駒井さま:元々、プログラミングもしたことなく、AIに関する知識も全くなかったので、AnyDataに触れる前はかなり抵抗感がありました。「アノテーション」や「推論」という言葉を聞いても、意味がわからない、という状況でしたね。しかし、実際に触ってみると「AnyData」での作業がとてもシンプルだったのが想定外でした。AIは複雑なものという印象があったのですが、分かりやすいUIや、クリックだけで作業が進められるので安堵しました。

ーー AnyDataを使っていて困ったことはありましたか?
駒井さま:AIを学習させるためのデータとして、図面の画像にラベルを付けていくアノテーション作業は結構しんどかったです。今回開発しようと思ったAIモデルは、1枚の図面に50個ほどアノテーションをしなくてはならず、実際に2つのモデルを作るために、30,000個のアノテーションを1週間でやり遂げました。その結果、10日間でAIモデルを動かすことができました。

※ユーザーエクスペリエンスの向上に向けたAnyDataの機能アップデートを実施
・学習データの最小必要枚数を300枚から20枚に変更し、より少量の学習データでAIモデル開発が可能に
・画像データにアノテーション情報が付与されたJSONファイルをアップロードできるインポート機能を追加し、アノテーション作業を不要に

ただ、振り返ってみて思うのは、業務に携わる本人がAI開発に取り組むことに、意味があったということです。完成したAIモデルを見るにも、実際にその業務の理解の深さで、結果の見え方やAIモデルそのものへの熱量も変わってきます。特に、私はカスタマーサービスの経験の中で、お客様とのコミュニケーションで培った経験やノウハウがあったからこそ、今回のAI開発へ落とし込むことができました。何事もそうですが、触れば触るほど詳しくなっていくので、AnyDataのコツを習得し理解を深め、自分の経験やノウハウを反映させることがAIモデルを完成形に近づけるには非常に大切だと感じました。また、自分自身のAIに対する知識習得・学習にも繋がりました。

AIの精度の完璧さではなく、運用しながら精度向上を

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ーー AIモデルを開発し、実際にAIに対するイメージは変わりましたか?
駒井さま:アノテーションを終えた後も「こんな簡単な作業でAIが開発できるのか?」と疑っていました。しかし、開発したAIを初めて実行させた時に8割に近い精度が出て、想定以上だったこともあってガラリとイメージが変わりました。シンプルな作業でもデータを積み重ねることで、こんな結果が得られる時代なんだな、と驚きましたね。

また、AIモデルを開発をする中で、精度の完璧さをAIに求める必要はない、と考えるようになりました。AIの開発需要はますます増えていますが、当社はまだ発展途上で、大企業のようにAI開発に費用を投じることは難しいです。一方で、それ故にいい意味でAI開発にプライドがないんですよね。多額のコストをかけると、期待もあり、やはり完璧を求めたくなります。それに対して、今回は「ルーチンな手作業を効率化したい」という気持ちでAI開発に取り組みました。そのため、開発したAIモデルの精度が8割でも、8割の工数を削減できるんです。だったら、100%を待つよりも、8割を削減しつつ、徐々に精度を上げていけば良いと考え、実運用に向けて動きました。

ーー 開発したAIモデルはどのように活用されているのでしょうか。
駒井さま:まずはお客様に、より短納期でサービス提供できるよう、社内の業務効率化に活用します。今は業務自動化に向けてAIモデルの精度向上などを進めている段階ですが、今まで手作業で2〜3週間かけて行っていたものが自動化されれば、数日でお客様からの依頼にも対応することが可能となります。

自社内の業務が自動化できましたら、次のフェーズとして当社が提供しているアプリへ実装を想定しています。現在はBPOサービスとしてオプションで依頼している作業が、アプリ内で完結できればよりお客様の利便性向上に繋がります。そのために、まずはモデルの精度向上に努めていきます。


ーー AIを開発してみて、周囲からの反響などはありましたか。
駒井さま:当社で初のAIモデルが開発できたことを、上司や周りのみんなが「AIアーティストが誕生した」と喜んでくれていました(笑)また、実際に開発したAIモデルをみた社員からは「この業務が出来るなら、見積作業などにも活用できそうだよね」といった意見をいただきました。一人だけで考えると、意外なところに見落としがあったりしますので、別の視点から意見をもらうことで新しいアイディアにつながり、社内で良い相乗効果が生まれているなと実感しています。


ーー 今後の展望を教えてください。
駒井さま:今は開発したAIモデルの業務での実用に向けて、徹底的に仕上げていきたいと思っています。学習させる図面に関しても、世の中に多様な建物がある通り、図面の種類も本当にさまざまですので、引き続き、アノテーションと学習を継続させてます。

その上で、私自身が「AnyData」 を使って、実際に「めんどくさい」が解消されそうという体感を得ることができたので、この成功体験を社内でも共有していきたいです。自分の業務だけに留まらず、社内の様々な業務でIT化を進めることにより、結果として、お客様の問題解決にもつなげていきたいです。

※「Learning Center」は「AnyData」に機能統合しました。

社名:スパイダープラス株式会社
住所:〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目12番5号 東京信用金庫本店ビル 7階
設立:2000年2月
URL:https://spiderplus.co.jp/

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