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異色のキャリアで培ったエンジニア経験、AI民主化によって「人類の夏休みを増やしたい」【MY CAREER STORY】

「誰もが使える世界規模のAIプラットフォーム」の実現を目指すAI inside。2022年5月には株式会社aiforce solutions を吸収合併しました。その際には経営陣もAI inside へジョインし、現在はIntelligence UnitのVPとしてAI開発基盤となるプロダクト開発を推進する井上拓真も、その一人です。

エンジニアたちと共にプロダクトを発展へ導く、重要なポジションを務める井上。aiforce solutions でもCTOとして、主要サービスの開発に携わっていました。どのようにキャリアを積み、今ここにいるのか。そして、このキャリアの歩み方だからこそ、井上が心がけているマネジメントのスタイルも伺えました。

井上拓真(Takuma Inoue)
VP of Intelligence Unit
中学生の頃、複数のWebサイトを立ち上げ、月間50万PVを達成したことから、プログラミングの楽しさに目覚める。また、プログラミングの講師として数百名の教育やカウンセリングに関わり、第一線のプログラマーを輩出した経験を持つ。これまでスマートフォンアプリからサーバーサイドまで幅広く手がける。甘いものが好きで、自宅には専用の冷蔵庫にいろんな種類のいちごチョコやバナナチョコが入っている。

※内容や肩書・所属は記事公開当時のものです

中学生で作ったホームページ、月間50万PVになる

──コンピューターやインターネットに触れたきっかけは何でしたか?

小学生高学年の頃には使っていましたね。初めて自分用に買ってもらったコンピューターはNECのLAVIEで、OSはXP。ノートPCだったけど、めちゃくちゃデカいし重くて(笑)。

当時のインターネットはチャットブームでしたよね。僕はチャットでBBSやすぐに返信ができるようになりたくて、ブラインドタッチを覚えました。友達のお父さんがイラストレーターで、家族みんながMacを持っていて「超かっこいい!」と思ったり。その友達が自分のホームページを作っていたのに影響されて真似してホームページを作り始めたのが、たしか中学1年生でした。

──僕も中学2年生のときに作りましたよ。HTMLを手書きして……(しばらく、ふたりでジオシティーズ、カテゴリ時代のYahoo!、ホットメール、ICQなど「いにしえのインターネット話」で盛り上がる)。

いやぁ、ありましたねぇ。僕は、自分が大好きなゲームの『真・三國無双』の攻略サイトを作ってました。ゲームの攻略情報は今みたいに簡単に手に入らず、せっせと「2ちゃんねる」あたりを情報源にしながら、自分でもプレイして内容を確かめて載せるようになったんです。

そうしたら、毎日2万人くらいの人が訪れるようになり、Yahoo!の「おすすめページ」に選ばれたり、カテゴリ申請も通過したりして、さらにページビューは上がりました。多い時で一日5万人くらいが来ていました。自分の作ったものが、すぐにホームページという場に反映されて、しかも来訪者から反応がもらえる。それがすごく面白くて夢中になりましたね。

パソコンが得意なヤツ、全力で日々の仕事を続ける

──そうして、プログラマーの道に進んでいったのでしょうか?

ファーストキャリアは、宅配寿司屋さんの社員で、店長も務めました。魚は捌けないけれど、きゅうりを切るのは好きでした(笑)。店長業務でやっていた、スタッフのシフト表や売上の集計などが、アナログなやり方ですごく面倒だったんです。それで、Excelのマクロで自動化するようになって。そうしたら、会社でも「パソコンが得意なヤツがいるぞ」と話題になったようで、店舗店長から本社勤務に異動になりました。

いわゆる情報システム部のような立ち位置で、社内のパソコンに関わる業務から、社内サーバーの管理、導入ソフトの検討、ついには会社としてアプリをリリースすることになったので、iOSやAndroidなどのアプリ開発も必死に勉強しなくちゃならなくなって。

──パソコン好きが高じて、仕事になっていったというか。

そうですね。一定の知識や経験はありつつも、どれも超大変でした。ただただ目の前のことに全力で取り組んでいる感じでしたけど、面白くやっていたのは事実です。

そんな時、副業としてプログラミング教室の講師として働く機会に恵まれました。とはいえ、付け焼き刃だらけの独学だったせいで、自分も「学びながら教える」くらいの日々でしたが、基礎知識はそこでグッと伸びた感じがします。ありがたいことに教師としての評判はとても良かったです。

──学習者と目線が近かったのが功を奏したのかもしれませんね。ただ、ダブルワークの上に勉強もして……となると、大変でしょう?

本当に大変でした。9時から18時は会社で働いて、夜に4時間ほど講師業をする生活を1年くらい続けましたね。

ただ、その教室で出逢えたのが、後にaiforce solutions を立ち上げる西川智章さんです。西川さんは生徒として通っていて、「AIを扱うiOSアプリを作りたいんだ」と無邪気に言っていました(笑)。面白くて、会えばよく話をする仲でした。

時代はちょうど2016年頃で、巷ではAIブームの到来前夜くらいでしょうか。そうしたら、教室を卒業した西川さんから連絡が来て、「AIで起業するから一緒にやらないか」とオファーをもらったんです。結果的にaiforce solutionsへ転じることを決めました。

「AI民主化」をさらに実現するための合併

──aiforce solutions には、どういったポジションで?

プロダクトマネージャーの予定でしたが、ひょんなことから入社早々CTOに就任することに。ただ、当時はAIのこともほぼわかりませんから、アプリ開発を委託していた協力会社の方には訳知り顔に「いいですね、よく書けている」なんて言いながら、また裏側で猛勉強をする日々に……。

僕はiOSやAndroidといったネイティブアプリの開発がメインだったので、機械学習のことは西川さんに教えてもらいながら、必死に学んでいきました。「ただやるしかない」と覚悟を決めて、論文なども読みながら覚えていったPythonやReactで「AMATERAS RAY(現Learning Center Forecast)」というAuto Machine Learning(自動機械学習)ソフトウェアを開発しました。

──そこからAI inside と合併することになり、どのような思いでしたか?

合併前からAI inside のことは知っていましたし、会社としてすごく尊敬していました。AI関連でまともにプロダクトを立ち上げ、しっかりと稼げているのは、僕が知る限りは2社しかなく、そのうちの1社だったからです。

ただ、合併の話を聞いた当初は、「AIの民主化」という目的のために全てを捧げてきた僕らが、合併後も変わらずにそれを目指せるのか、正直なところ疑問はありました。AI inside とaiforce solutions は似ている部分もあるけれど、どこかが違うとも感じていました。

ですが、AI inside の経営陣・メンバーとも交流を重ねるうちに、次第に「同じ想いを持ったメンバーと一緒に夢を追いかけられそうだ」と感じられるようになり、今では楽しくやっています(笑)プロダクトを見ても、根底にある「AIの民主化」に対する思想が同じなんです。

「質問できる回数=成長の伸び率」につながる

──現在は、どういった職務に就かれていますか。

AI inside の開発チームは、Use(AIを使う)・Make(AIを作る)・Run(AIを動かす)の3軸でチームを分けています。たとえば、Useにあたるのが「DX Suite」で、僕はMakeにあたる「Learning Center」と、新しいプロダクトの開発を見ている立ち位置です。

──マネジメント職でもあるわけですが、どういったスタイルを心がけていますか?

基本的にプログラミングやエンジニアとして僕よりレベルが高い人ばかりなので、自らバチバチとプログラムすることが僕の責務だとは、思ってはいません。AI inside にも飛び抜けて優秀な人たちがいますが、彼らが「一緒に働きたい」と思ってくれることがとにかく嬉しく、さらに知見を得られることも僕にとっては楽しいんです。なので、優秀な部下が来てくれることへの劣等感やコンフリクトも起きないんです。

そのベースがあった上で気をつけているのは、とにかく相手の話をちゃんと聞いて、返答すること。わからないことはすぐに「わからない」と表明して、説明してもらう。できる人からすれば説明は面倒だと感じるかもしれない。でも、ちゃんと質問されたり、ちゃんと頼られたりしたとき、嫌な気持ちになる人はそれほど居ない、とも感じています。聞く側の反応が「打てば響く」ようになれば、相手にとっても手応えになります。僕はそういうふうに「質問できる回数=成長の伸び率」につながると考えているんです。

そもそも、質問ってすごく難しいものです。デプスインタビューとしてお客様に会って話を伺うときにも感じますが、自分のわからない分野でクリティカルな問いを投げるのは、本当に難易度が高い。一方で「質問力」は鍛えることもできるはずだと、常に意識しています。

──上司部下の関係性というより、AIの民主化という「同じ夢や目標に向かう仲間」であれば、なおさら虚勢を張る必要もないでしょうしね。

全くないです。僕自身も「どこを目指すか」という点には気を払って話していますね。たとえば、「僕らはこういった目標があり、今はそのためにこういうデータが欲しい。僕一人では難しいけれど、みんなで協力すれば実現できるはずだ」という話をします。

会社やサービスのフェーズを捉えつつ、「だから、こうなりたい」と目標を伝える。その意味ではビジョナリータイプだと言っていいかも。細かなことがあまり得意でない代わりに、抽象的なことばかりを考えています(笑)。

ただ、これからもっとAI inside としての技術を標準化して、エンジニアや開発全体のレベルアップを図っていくことは急務です。現状、実現したいことに対して開発リソースはまだ足りないですし、これからイノベーティブなことを手掛けていくためにも開発組織の拡大は欠かせません。

人類の夏休みを増やしたい

──AI inside で一緒に働きたい人、あるいは向いている人は、どんなタイプですか?

「カオスを楽しめる人」であれば、AI inside は楽しく仕事ができる環境だと思います。「カオス」だからこそ、それだけ様々な要素やチャンスが身の回りにあるともいえる。自分の意見が開発の方針を変えうるようなことだって起きますし、自由であることを楽しめる状態でもある。

「安定した環境でプログラミングを粛々とやりたい」という人は、あまり向いていないかもしれません。でも、面白いことを引き寄せたい、チャンスに近づきたい、エンジニアリングを通して何かを実現したいという人とは、一緒に仕事をしたいですね。

──ハードスキルで求めていることはありますか?

あまりないです。極論を言えば、扱える言語や経験の長さといった現状の実力は重視してはいません。先ほど話した質問力しかり、成長の伸び率のほうが気になります。

「できるエンジニア」は、僕からすると「自分のことを知り、何が分かってないのかを知っており、それを改善していこうという勇気がある人」だと言い換えられます。エンジニアは知識商売の部分もありますから、「わからない」ということを言いづらい面があるのも事実でしょう。でも、そこでも自分から学びを得るために動いて、足りない部分を埋めていきながら、さらなる「わからない」を見つけに行けるような人ですね。

──AIの民主化という夢は追えど、今手掛けているサービスがより進化した先で、どういった未来を描いていきたいですか。

人類の夏休みを増やす」、そんな世界にしたいです。

要は、人類と同等の働きができるAIによって、仕事を数パーセントでも置き換えていければ、単純にゆっくりできるじゃないですか?

シンプルに「やらなくていいことを、無料同然でやってくれるようになる」と仕事は減らせるはず。AIが人間の能力を拡張させるといえば、最近は画像生成AIも話題ですが、あれらも絵描きの人のツールになっていくはずです。

それこそ遡れば、写真が普及したときに「これで絵描きの仕事がなくなる」と言われました。でも実際、写真はデッサンの練習に使われたり、名画の鑑賞に用いられたり、絵描きのためのツールになっていったじゃないですか。AIも、きっとそうなっていくと思うんです。

AIをより多くの人に届ける上では、根本的に使えるAIの数がまだまだ足りません。僕たちが作っているものによって、その数を底上げできるようになるので、AIの民主化にも一気に近づけると考えています。

僕自身の3年後は……なんだろうなぁ、筋トレで懸垂40回連続でやりたいかなぁ(笑)。

(文・写真/長谷川賢人)
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