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【開催レポート】生成AI新サービスを発表、AIエージェント「Heylix」が人類のパートナーとなる世界の実現へ

AI inside は、2023年8月3日(木)より、AIエージェント「Heylix(ヘイリックス)」を招待制のクローズドβ版にて提供を始めました。8月2日には、「Heylix」の提供に先駆けて、メディア向けに『生成AI新サービス発表会』を開催。

人間とAIが融合することで、人類は今より進化できると考えています。今回の「Heylix」は進化の歩みを進めるものです。」と渡久地は話します。

ここでは、新サービスである「Heylix」の紹介をはじめ、「Heylix」により実現される世界観、そしてAI inside の未来像も語られた発表会の様子をレポートします。

あらゆる仕事を自律的にこなす、AIエージェントが必要だ

発表会の冒頭で、代表取締役社長CEOの渡久地 択は「我々は人口が減っていく中にあっても、経済をグロースさせていくために、AIに仕事を担ってもらうことを主軸に事業展開してきました」と話します。

2017年にAI-OCR SaaSの「DX Suite」をリリースして以来、実証実験にとどまってきたAIをビジネスの現場で活用することに、AI inside は注力してきました。2017年から2023年3月末で、AI inside のAIが人間からのリクエストに応えてきた数は約50億回

AI inside のサービスが多くのユーザーから信頼を得て、約50億回というリクエストに応えてきたことは、提供するAIも再三の学習を経て、より良くなってきていることを示しています。

こういった「好循環のサイクル」をさらにもたらすものとして、AI inside は2021年に誰もがノーコードでAIを簡単に構築し、本番環境で動作させられるサービス「AnyData」*1をリリース。大量のデータ保持とAI開発・運用を実現させ、多くの企業にとってもAI inside の「好循環のサイクル」を、自社のサービスやアプリケーションに組み込めるようになりました。

また、生成AIの領域にも進出。「正面を切ってグローバルへ勝負に挑まなければならない」という想いのもと、自社で大規模言語モデル(LLM)の開発に取り組んだ結果として、2023年6月には「PolySphere-1(ポリスフィア-ワン)」を発表しました。

「しかし、AnyDataやPolySphere-1をリリースするだけでは不十分です。誰もがAIを使える世の中にするためにも、これらを“いかに使えるようにするか”に課題がある。日本のビジネスパーソンを対象にした調査で、生成AI・LLMを認知しているのはおよそ56%ほどで、継続利用しているのはわずか8%に留まる*2という結果もあります。未だに生成AI・LLMを活用できていない92%のビジネスパーソンに届けるべく、あらゆるタスクや仕事を自律的にこなしてくれる、AIエージェントの存在が求められると考えたのです」と渡久地は話します。

今回、新サービスとして発表した「Heylix」はAI inside が保有する予測AI・画像認識AI・生成AIなどの技術を組み合わせて開発した、AIエージェントサービスです。「Heylix」のローンチは、自律的にタスクをこなせるAIが、人類のパートナーとして寄り添う未来へ近づく一歩でもあります。

*1 当時の名称は「Learning Center」、2023年6月に「Learning Center」は「AnyData」に統合。
*2 AI inside がビジネスパーソン1,161名を対象に実施した「生成AI・LLMの活用実態・意向調査」より。クロス・マーケティング社が保有するパネルを活用。

対応帳票は無限、AI生成から結果出力まで約1分

「Heylix」は、業界・業種を問わず、あらゆる業務を汎用的に支援するAIエージェントです。ユーザが指示を出すと、「Heylix」は指示をこなすためのマルチモーダルAI*3を生成します。

生成されたマルチモーダルAIは、自律的にタスクをこなしてくれる「ユーザの相棒」として働くことから、「Heylix」の中では「Buddy(バディ)」と呼びます。

この日、渡久地はデモンストレーションとして、サンプルとして用意した貸借対照表をもとに「Heylix」で財務諸表を分析して見せました。「Heylix」に貸借対照表の画像データを読み込ませ、「この財務諸表をOCRしてください。そのデータを{項目;その内容}というJSONフォーマットで構造化して表示してください。」と指示すると、「Heylix」は数分とかからずに、指示通りの結果を出力しました。

AI inside はこれまで「DX Suite」でAI-OCRのデータや知見を蓄え、多種多様な非定型帳票のフォーマットを扱う能力を強化してきました。しかしながら、「Heylix」は定形/非定型帳票を問わず、「無限のフォーマットに対応できるようになった」と渡久地は言います。

今回の「Heylix」の誕生の裏には、「あらゆる帳票のレイアウト認識と文字認識が事前学習なしで可能になった」というAI inside が保有するAI-OCR技術の革新的なアップデートがあります。さらに、生成AI・LLMを連携させたことで、人々が自然言語でAIを使いこなせるAIエージェントとして機能するサービスとなりました。

「Heylix」は、データを読み取り・構造化するだけではなく、さらに予測AIなどと組み合わせ、財務諸表のデータを元にその企業の財務状況を分析することも可能です。この日のデモンストレーションでは、金融機関での利用を想定して追加指示を出しました。

「この財務諸表をOCRしてください。そのデータを{項目;その内容}というJSONフォーマットで構造化して表示してください。そのデータを元に、この企業に当銀行がいくら融資可能か金額で予測して表示してください。融資可能金額の根拠は最後にコメントとして付記してください」

このように「Heylix」に日本語で指示することで、特別なプラグインの導入やプロンプトデザインも必要とせず、AIが動作を開始しました。デモンストレーションでも、マルチモーダルAIの生成から必要とする結果の出力までを約1分で実現しました。

また、自社に特化したデータ学習領域を区分できる「AnyData」の基盤と併用することで、より“自社らしい”AIも構築できます。デモンストレーションの発展形で言えば、これまでの融資実績など数万件のCSVデータをインポートすれば、「10分後には融資モデルを作成できます。データの欠損や未整理の問題も、我々の技術で欠損値などを自動的に調整して特徴を導き出します。ユーザはデータを入れてワンクリックすれば良いのです」と渡久地。

*3 テキスト・数値・画像・音声など、様々な種類の情報を複合的に利用して高度な判断を行うAIのこと。

API連携であらゆるソフトウエアを「Heylix」で操作する

また、「Heylix」は他のソフトウェアやSaaSをAPIで連携して動かす機能が備わっています。データソースの取り込みや、出力結果のデータを他のサービスへ連携することも可能。つまり、「Heylix」によって、世の中の様々なソフトウェアを自律的に操作することができるのです。

渡久地も「この連携の可能性は計り知れないものがある。私たちの目標は、最終的に全てのソフトウェアを「Heylix」で操作すること」だと述べます。

全てのサービスがつながるようになれば、その指示や連携によって、より多くの高度なタスクをこなせます。それにより、従来はサービスごとにUIが分断していた機能を「Heylix」によって、一気通貫で活用できるようになります。

「Buddyアーキテクト」を新たな職業に

渡久地は「Heylix」が生成するマルチモーダルAIの“Buddy”を作る人を「Buddyアーキテクト」と呼び、将来的には新しい職業として成立させることを目指しています。また、“Buddy”をユーザ間でシェアできるように、マーケットプレイスを整備する構想を明かしました。“Buddyアーキテクト”が生み出した“Buddy”を多くの人々に提供し、更なる利用の促進を図る計画です。

渡久地は「”Buddy”を作るとき、人はユーザや社会のことを見つめながら、「どうすればこのテクノロジーをうまく扱えるのか」と考えるようになります。すぐに作れて、他者にも共有し、反応を得ながら試行錯誤できる環境が出来上がる。その意味では、人々のクリエイティビティに期待が掛かる場ともいえます」と述べ、続いて「まずは“Buddyアーキテクト”を1,000人生み出したいと考えています。その1,000人が、独自のクリエイティビティを発揮してAIを創出し、AnyDataがこれまで生んだ570あまりのAIの数を遥かに超えていきたいです。KPIとしては10倍の5,700以上のAIを生成したい」と意気込みを語りました。

すでにユーザやISVパートナー(独立系ソフトウェアベンダ)との連携を推進するとともに、生成AI・LLMの伴走型リスキリングプログラムにおいても、“Buddyアーキテクト”の育成講座も開始しています。

生成AI・LLMプレイヤーとしての今後を見据える

会場からの質疑応答では、ChatGPTなどの類似サービスとの比較や業界動向に関する問いかけが見られました。

渡久地は質問に答えるなかで、「LLMを開発する立場になってみて、LLMのパラメーターを増やす戦いは、すでに終息していると思う」と見解を述べます。

今後は最適なルーティングを行い、バックグラウンドで複数のモデルを協調して動かすことにより、高い精度とコスト効率化のメリットが得られる方向性にシフトする見方を、渡久地は示しました。

また、最後に新機能の実装予定についても触れました。「直近では、エンタープライズサーチ機能のリリースを予定しています。この機能では、議事録やマニュアルなどの特定企業に特化した情報やデータを読み込ませることで、それをもとにしたチャットボットを自動生成できます。実際にAI inside が持つ過去4年分の議事録を全て入力し、「Heylix」に議事録から学んだチャットボットを生成するように指示し、実現しました」と言います。

「あるサービスのFAQに対するURLを送信し、そのURLの内容を元にチャットボットを生成することも可能です。実際に、様々な企業や部門の議事録を基にチャットボットを更新するなど、細かいニーズにも応えられる形で提供できるようになると思います」と渡久地。汎用性の高い使い方ができるのも、ChatGPTなどとの大きな違いでもあると強調しました。

今後、AI inside としては、生成AIビジネスの本格的な拡大を実現し、生成AI・LLMプレイヤーとして、グローバルにおけるスケール拡大を目指していくことを長期的なビジョンに掲げました。日本発のAIプラットフォーマーとして世界を見据えるその視線には迷いもブレも感じられず、ただ一点の発展の途が示されているかのようでした。

(文・写真/長谷川賢人)
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